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2017 12 15

脳の長距離伸長戦略 Long Growth Strategy of Brain


 なぜ前頭葉は額にあるか,考えたことはあるだろうか.視覚野は頭の後ろ,言語野は耳の近く,運動野と感覚野は頭の上にある.それぞれ,目から,耳から,身体から,最も遠い所に位置していることがわかる.前頭葉から最も遠いのは,首である.判断するときには首を振るのだから.鼻や口は領野までの距離が短いが,嗅覚や味覚は化学的環境が必要なので,胎内でも重要な目や耳や身体に比べて,後から発達する器官であると考えることができる.

 軸索は中心体を付け根として伸びる.光やイオンなど,電磁的刺激を受けると中心体で電流が生まれ,イオンを押し出す.これが神経伝達である.ニューロンは光やイオンがある限り伸び続ける.年老いると記憶を思い出すのに時間がかかったり,話が長くなったり,性格が穏やかで円くなったりするが,これらはニューロンが長くなったせいである.

 なぜ生命は大きくなったか.より多く興奮するためである.興奮運動はイオンがたくさんたまり重くなるために起こる.いまはそれ以上ためられないから興奮する.細胞がイオンをたくさんためられるようになると,容易に興奮しなくなる.言語を使う動物ほど脳が大きいのは,感覚や運動を受けなくても多く興奮できるからだ.興奮を長くしようとするから神経が伸び,身体が伸び,脳が長くなる.興奮した分だけ長くなる.

 イオンは移動するので,イオンの運動エネルギーを放散する仕組みが必要になる.また,脳には糖分が集まるので,エネルギーを発散しなければならなくなる.そこで,ニューロンを遠くまで伸ばすことで,身体を冷やし,周辺器官で生化学反応を進めさせる.イオンが移動すると,電流が生じるが,そのとき信号が混線しないように,軸索は電気を通しにくい脂肪で覆われている.脂肪なら,水よりも温まりやすく冷めやすいので,信号物質の移動による熱を放散しやすい.熱や光の情報を削除するために,すなわち興奮を持続させないために,伝達にエネルギーを使う.伝達するほど温度が下がり,落ち着けるのだ.

 神さまはこのように脳に興奮を忘れる機能をつくりたもうた.興奮をひとりの脳で続けるだけでなく,他の脳にも喜びを伝えるためにそうなさったとも思える.お世話になった人たちに喜びや感謝を伝えられたか,神さまのもとで一年を振り返る時としたい.