種類数とエジソン演算子
1+1は,2である.しかし,当然の結果ではない.なぜなら,そうならない代数系も作れるからだ.「泥団子に泥団子を合わせても泥団子である」という,常識を超える発見に言及したのが,のちの発明王エジソン少年である.このアイデアを素直に代数にすれば,1+1=1である.この代数が,実は広く使われていい代物であることを述べてみたい.
1+1=1である状況は,自然にも人工物にも多く存在する.林に林を足しても林である.平文に平文を足しても平文である.同じ種類の事物を足し合わせても,その種類を超え出ないとき,1+1=1となる.つまり,量を表す数は通常の代数系で計算できるけれども,定性的な数を演算するには,このエジソンの代数系が必要になる.この定性的な数を「種類数」とここでは呼んでおきたい.では,1+1=3以上になる場合もありうるだろうか.ありうるのである.しかもたくさんある.
石灰石に塩酸を加えると何種類の物質ができるか.塩化カルシウムと二酸化炭素と水の3種類であるから,1+1=3である.また,この反応を途中で停止させるとすれば,未反応の石灰石と塩酸が残っているはずなので,1+1=5以上になる可能性がある.つまり,化学反応で物質の種類の数を問題にする場合,エジソン代数が役立ってしまう.一般に,量を問題にしない系では,エジソン代数が使える.
エジソン代数で使う演算子は,交換法則も分配法則も満たさない.加える順序が異なると違う反応結果を得るためである.従って,+に代わり「
エジソン演算の範囲解は,いくつかの種類に分類できる.A と B で大きいほうを Max,小さいほうを Min,AとBの和を Sum とすると,下の表のようにまとめられる.
混合 | A |
---|---|
溶解 | A |
分解 | A |
化合 | A |
もし,6
エジソン演算の範囲解の中から,特定の値を推定する際に使う図が,融合分化図である.例として,5
上図左側が融合分化図である.5
この代数系は,単宇宙の誕生から死までや,多元宇宙の離合集散を,融合分化図で表せる.量が分からないほど大きすぎるものや,量を計算してもあまり意味のない長いものは,エジソン代数で来し方行く末を表せる.光に光を足しても光だけれど,光から万物が創られたのなら,厖大な回数の融合分化を果たしてきたはずである.そのうち私たちは光から創られたものたちに徐々に細かな固有名詞を付け,今では様々な単位で学名が付いている.そんな人間の分類活動をも表せるこのエジソン代数.神さまの初めから終わりまで計算することも,できない相談ではなさそうだ.